統一特許裁判所

組織

UPCは,参加加盟国共通の国際裁判所であり,欧州単一効特許および単一効のない欧州特許の専属管轄を有している(但し,上記3項で解説した選択肢であるオプトアウトを参照)。UPCの判決は,単一効特許または単一効のない欧州特許が有効なすべての参加加盟国において効力を持つ。

UPCには各加盟国に分散した複数の中央部,地域部,地方部を含む第一審裁判所,ルクセンブルグにある控訴裁判所,登録課がある。中央部はパリとミュンヘンに設置される予定で,当初ロンドンに予定されていた第3の中央部がどこに移されるかはまだ決まっていない。

希なケースではあるが,統一特許裁判所の訴訟で生じたEU法解釈の問題について欧州司法裁判所に判断を仰ぐことがある。

訴訟の管轄および言語

侵害訴訟は,被告の(主たる)事務所所在地,実際の侵害が発生または侵害のおそれのある場所,また特許取消請求訴訟がすでに係属中であるかどうかに基づいて,地方部,地域部,中央部のいずれかに提訴できる。特許取消請求訴訟は,侵害訴訟が係属していない場合は中央部に提訴する必要があり,侵害訴訟における反訴として特許取消を求める場合は侵害訴訟が係属している部に提起する。地方部・地域部では,侵害訴訟と特許取消を求める反訴をひとつの訴訟でまとめて審理するのが通例となるものと予測されている。但し,侵害訴訟と特許取消請求訴訟の分離も禁止されているわけではなく,取消を求める反訴を中央部に回付することもできる。当事者双方が合意した場合には,侵害訴訟と特許取消請求訴訟を両方とも中央部に回付できる。

地方部及び地域部での訴訟の手続言語は各国の公用語である。裁判所の承認があれば,特許が付与された言語を使用することを当事者が合意してもよい。中央部の訴訟では,特許が付与された言語が手続言語となる。